いつの時代も周期的に訪れるブームがあります。
転職、副業、脱サラなど形を変えて世の中に出回ります。
そんなブームに共通しているのは、今の自分を変えたいという切実な願いだと思います。
自己啓発に関するビジネス本は常に書店に並んでいます。
そういった本を読んで「自分」を変えることはできるのでしょうか。
アドラー心理学を用いた嫌われる勇気という本が流行りました。
人のすべて悩みは人間関係に起因するものであるとし、他人からの承認を求めることを止めるように説いています。
本を読んで自分らしく行動しようと奮い立った人は大勢いると思います。
しかし、2013年にこの本が出版されていますが、嫌われる勇気が身についた人はどのくらいいるのでしょうか。
恐らくほとんどの人が読む前と変わらない自分に戻っていると思います。
読んだ直後は気持ちも高揚していたと思います。
しかし、次の日になると気持ちは萎んでいたのではないでしょうか。
自分の認知を変えるというのは、難しいことなのです。
こんな実験結果があります。
心理学者による実験で、てんかんなどの治療のために右脳と左脳をつなぐ脳梁を切断した「分離脳」患者に対して、「笑え」と書いたボードを患者の左側の視野に入るように置いたそうです。
※人間は右側の視野は左脳に情報を送り、左側の視野は右脳に情報を送るとされています。言葉を理解する言語中枢は左脳にあるため、左側の視野から「笑え」という文字を見せられても意識することができない。
すると、ボードのことは見えていないはずなのに、患者は指示通りに笑い出したのです。
「なぜ笑ったのか」と心理学者が尋ねると患者は「先生の顔がおもしろかったから」と答えたそうです。
この実験から右脳には、ボードの指示を言語として表現をすることはできないけれど、その指示を理解して行動に移すための知能があることが判明しました。
この行動は無意識に行われたものであるため、なぜ笑ったのかということが本人にはわかりません。
ボードの指示によって笑ったにも関わらず、「先生の顔がおもしろかったから笑った」と回答をするのは、自分が笑ったからには何か理由があるはずであると合理的な理由を探した結果です。
このことから、人間の行動(性格)というのは、無意識の行動に支配されていることがわかります。
無意識に笑ったり泣いたり怒ったりするという要素から性格というのは構成されています。
楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいということです。
無意識を理解して意識することはできません。
笑っている自分に気がついて、なぜ自分は笑っているのかを考えることができるのです。
つまり、本当の理由はわからないのです。
性格を構成している無意識を変えることができない以上、人の性格は変わることはありません。
自分の弱いところを認めて過ごすことが大切です。
しかし、弱い部分を工夫して乗り越えることもできます。
例えば、仕事で電話をするということが苦手な人は多いと思います。
相手の顔が見えないから交渉がしにくいという理由から単純に電話が嫌いという理由もあると思います。
そのときに多くの人は、「電話で緊張しないようにする」という努力をしてしまいがちです。
緊張しない方法をネットで調べたり、本を読んだりすると思います。
しかし、そうではなくてメールで済むように努力をするという工夫をしたほうが良いのです。
自分を変える努力というのは長続きしませんし、気持ちにも負担がかかってしまうものです。
目的を達成するための手段を変えるほうが精神的な負担も減ります。
自分を変えることはできないけれど、目的を達成するための方法は工夫次第でなんかとなると考えることが大切です。
無理に自分を変える必要はないのです。